継続して便利に使い続けるためのOSS選定のコツ
システム管理のつぼ(2017年9月号)
OSS研究室 森 彰吾
デージーネットは、オープンソースソフトウェア(OSS)を取り扱って15年以上になります。その経験上、OSSに対する考え方は、ここ数年で大きく変化してきたと感じています。数年前は、OSSの信頼性を疑問視する声が圧倒的に大きかった ことに比べて、現在では、OSSを利用することを指定してご依頼を頂くことが多くなっています。OSSを扱う理由は、ここ数年で培われた実績や、OSSの多様性・製品と同等以上の機能、コスト面での優位性など様々です。
しかし、OSSと一口に言っても様々です。同じような機能を有するOSSは複数存在することが多いです。「最初に見つかったから」という理由で、とりあえず採用してしまうと、後悔することもあります。よくある例としては以下です。
- 用途に一致したOSSが別に存在した
- 開発が終了していた
- 開発途中だった
- 使い方がイマイチわからない
- コミュニティへの問い合わせに対して応答が返ってこない
このようなことが発生すると、別のOSSでの再構築が発生したり、自分でソースコードを読んで動きを理解したりカスタマイズをする必要が出てきます。ソースを読めることやカスタマイズができること自体は、OSSを扱うメリットですが、時間が必要になります。多忙なシステム管理者としては、なるべくなら避けたいでしょう。
では、どのようにOSSを選定すると良いのでしょうか?
まず必要なのは複数の選択肢を持つことです。欲しい機能などをキーワードにして探してみると、様々なソフトウェアが見つかります。いくつかのソフトウ ェアが見つかったら、次にドキュメントを読んでみることをお勧めします。ドキュメントを読むことで、ソフトウェアが持つ機能や管理方法がわかります。 この時点で欲しい機能の有無や利便性など、ある程度の判断が付きます。
ただ、これだけで採用を決めるのは時期尚早です。この段階で、導入後も継続して便利に使えるかの判断をしておくと安心です。そのためには、ソフトウェ アの開発コミュニティやメーリングリストを覗いてみるのが良いでしょう。最近ではGitHubなどのサービスで開発が行われているソフトウェアが多く、開発 動向が覗きやすくなっています。次の観点で情報を集めます。
- 最後にソースコードが修正されたのがいつなのか
- メーリングリストは活発に動いているか
- バグ報告に対応しているか
- 出資企業の有無
- 有名なLinuxディストリビューションに採用されているか
コミュニティが活発に動いていれば、ソフトウェアを採用した後に問い合わせをして回答を得られる可能性が高いと判断できますし、バグへの対応も期待できます。
サポートの観点では、プロジェクトに出資している企業やLinuxディストリビューションのサポートサービスが受けられる可能性があります。
ここまででかなり選択肢が絞られます。あとは実際に使ってみるのが良いでしょう。イチから構築を始めるのは時間がかかりますが、現在ではDockerのコン テナやVagrantなど、環境を簡単に構築できる仕組みまで提供しているプロジェクトが多くなっています。そのような仕組みを利用して構築することで、比較的素早く実際の動作を検証することができます。
このようなフローで選定することで、用途にマッチして、管理もスムーズに行えるOSSを採用することができます。
ここまで読んで、このフローが手間と感じる場合には、デージーネットにご依頼頂ければ良いと思います。デージーネットでは、実用に耐えうるOSSを選定し て採用しています。お客様からご指定頂く場合もありますが、そのソフトウェアが古い場合や、用途にマッチしていない場合は、より良いOSSを提案させて頂 く活動をしています。お困りの際はご相談ください。