Nextcloud
今月の気になるオープンソース情報(2018年11月号)
OSS研究室 森 彰吾
今回はNextcloudを紹介します。Nextcloudは、主にファイル共有を目的としたソフトウェアです。
ファイル共有の手段はいくつかあります。例えばWindowsファイル共有のようなシステムを利用する方法です。この方法は、組織内(ネットワーク内)でのファイル共有手段としては便利ですが、外部からアクセスするためには、VPN接続が必要になります。頻繁に外出する人や在宅ワークの人にとっては、非常に不便です。また、組織外の人とのファイル共有手段に用いることが難しいという側面もあります。
また別の手段として、クラウドのファイル共有サービスを利用するという方法です。クラウドサービスの場合、多くはWEBインタフェースでのファイルアップロード・ダウンロードができるようになっています。そのため、利用する場所に制限されることなく、ファイルを共有することができます。ただ、企業がこのようなサービスを利用するためには、個人情報や機密情報の管理基準をクリアする必要があり、実際には利用が難しい場合があります。
このような場合に活躍するのがNextcloudです。Nextcloudは、オンプレミス/クラウドどちらでも構築可能な、WEBベースのファイル共有ソフトウェアです。WEBベースのため、場所に囚われずに利用できるというメリットを持ちつつ、オンプレミスで構築可能なため、組織のポリシーに従って、情報の保全を行うこともできます。
さらにNextcloudは、監査・操作ログの記録や細かいアクセス制御、ウィルス検査、組織外の人への一時的なファイル共有など様々な機能を備えています。またプラグイン機能もあり、プラグインをインストールすることで、カレンダーやビデオチャットなど、ファイル共有の枠を超えた情報共有ソフトウェアとして利用することもできます。
とても高機能なNextcloudですが、その源流はOwncloudというソフトウェアです。Nextcloudは、Owncloudというファイル共有ソフトウェアから派生して生まれました。どちらのソフトウェアも開発が継続していて、連携を取りつつ開発が進められています。ただOwncloudは、エンタープライズ版を重視して開発が行われている特徴があります。
NextcloudとOwncloudの特徴的な違いは次の通りです。
- モニター機能
- システムの負荷やディスク使用率を確認するための機能
- Nextcloud:有り
- Owncloud:無し
- ファイルのアクセス制御機能
- ファイルへのアクセス制御を行うための機能
- Nextcloud:有り
- Owncloud:エンタープライズ版のみ
- パスワードポリシー
- パスワードの文字数や文字種を制限するための機能
- Nextcloud:有り
- Owncloud:プラグイン
- SAML認証(シングルサインオン)
- SAMLを利用してシングルサインオンを行うための機能
- Nextcloud:有り(一部不具合有り)
- Owncloud:エンタープライズ版のみ
こうしてみると、Owncloudがエンタープライズ版重視ということがわかります。対して、NextcloudはOSSとして全ての機能を実装しています。
OSSとして自由に全ての機能が利用できるため、Nextcloudの開発プロジェクトはどんどん拡大しています。ソースコード管理サービスGithubのそれぞれのプロジェクトの参加者や貢献者は次のようになっています。
- Nextcloud:
- プロジェクト参加者:129人
- 貢献者:561人(nextcloud/serverのcontributors)
- Owncloud:
- プロジェクト参加者:96人
- 貢献者:460人(owncloud/coreのcontributors)
Owncloudより後発のプロジェクトであるにも関わらず、Nextcloudの方が参加者が多いことがわかります。参加者だけでなく、開発の活発さ(commit数)もNextcloudが上回っており、今後より多くの機能がNextcloudに追加されていくことが予想できます。
ただ、エンタープライズ版重視のOwncloudが劣っているわけではありません。Nextcloudは現在日本での公式サポートが存在しません。Owncloudは、日本でのサポートも対応しているため、サポートを重視する場合はOwncloudを利用する意味は十分にあります。そのため、用途・要件にあった選択が必要です。
デージーネットでは、Nextcloud/Owncloudどちらも構築サービスを行っています。また現在、メール送信時に、添付ファイルを自動的にNextcloudまたはOwncloudに配置して、ファイル共有を行う仕組みを検討しています。
働き方改革やオリンピックに向けたテレワークの対策として、在宅ワークが増えつつります。様々な場所で、同じ情報を共有する手段として、NextcloudやOwncloudを活用してみてはいかがでしょうか?