Rancher〜Kubernetesの管理ツール〜
OSS研究室 森 彰吾
今回はKubernetesの管理ツール「Rancher」をご紹介します。
Kubernetes運用/管理の問題
Kubernetesは、コンテナのオーケストレーションツールとして、デファクトスタンダードの地位を確立しています。しかし、一方で導入が難しい、学習・管理コストが高いという難点があります。つまりKubernetesの初心者にとっては、Kubernetesのスタートラインに立つところから敷居が高いものになっています。
Rancherの機能
Rancherは、このような敷居の高さを解消してくれるソフトウェアです。Rancherが持つ主な機能は次の通りです。
- Kubernetesクラスタの構築・アップデート
- Pod等のKubernetesリソースの管理
- 永続ストレージの管理
- Helmを利用したアプリケーションのデプロイ
- Kubernetesクラスタのスナップショット・リストア
Rancherの特徴
WEB UIでのKubernetesの管理
前述の機能はKubernetes本体に付属していますが、Rancherを使うとこのような機能を、ほぼ全てWEB UIから操作できます。Kubernetesを触ったしたことがある方であれば、このメリットを感じられると思います。一方で、経験の無い方にとってはピンとこないものかもしれません。
もっとわかりやすくメリットをお伝えします。Kubernetesでコンテナ環境を起動させるためには、次のようなマニフェストファイルを作って、コマンドでKubernetesに命令を発行する必要があります。
[nginx-deployment.yaml]
apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: nginx-deployment spec: selector: matchLabels: app: nginx replicas: 2 template: metadata: labels: app: nginx spec: containers: - name: nginx image: nginx ports: - containerPort: 80
しかも、これが最も単純な例というのもポイントです。つまり、様々なKubernetesの機能を使おうとすると、大量のマニフェストを作成する必要があります。とても面倒な作業です。
この作業を行わず、WEB UIの操作だけで管理ができると考えると、Rancherの良さが少しは伝わるのではないでしょうか?
Kubernetsクラスタの構築が容易
Rancherには、Kubernetesクラスタの構築の機能があります。オールインワンのKubernetesホストを構築するわけではなく、コントロールプレーンのクラスタリングなども含めて、柔軟に対応することができます。
またKubernetesクラスタ構築時のオプションも様々指定することができます。例えば、Kubernetesのバージョンを指定したり、CNIプラグインを選択する、などです。
そしてRancherが構築するKubernetesクラスタには、L7ロードバランサとしてNginx-ingressがプリインストールされていたりと、Kubernetesを利用するために必要なコンポーネントが予め用意されています。
つまり、Rancherを使うと、Kubernetesの初期設定の手間を大きく省くことができます。
Kubernetesクラスタのアップデートが容易
Rancherを使うと、Kubernetesクラスタのアップデートを、WEB UIから行うことができます。通常であれば、ノードを一台切り離し、アップデートを行って切り戻す、という作業を、ノードの台数分繰り返す必要があります。Rancherは、この作業もすべて行ってくれます。
またKubernetesのアップデートは、様々な検討事項があります。例えば次のようなことです。
- リリースされたKubernetesが安定版なのか開発版なのか
- CNIプラグイン等が、新しいKubernetesに対応しているのか
Rancherは、独自にフォークしたKubernetsを利用しています。またそれらは、Rancherプロジェクトで一定の動作検証が行われてから採用されています。そのため、Rancherを使ってKubernetesのアップデートをすることで、最新のKubernetesのバグを踏む、CNIプラグインが動かなくなるなどのリスクを低減することができます。
デージーネットでは
デージーネットでは、Rancherを含むKubernetes環境構築に関する新規サービスメニューを検討しています。ただKubernetesが使えるだけでなく、より安心・便利に使えるものを目指しています。
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