OSSのメーリングリスト管理ソフトウェア〜Mailman〜
OSS研究室 加茂 智之
今回は、オープンソースのメーリングリスト管理ソフトウェア Mailman 3をご紹介します。
メーリングリストは、登録されたメールアドレスにメールを一斉配布するための仕組みです。メールマガジンの配信のように組織外へのメール配送で利用する場合もあれば、社内の部署やプロジェクトメンバー間での情報交換で利用する場合もあります。それぞれの利用シーンによって、必要となる機能も違ってきます。
メーリングリストソフトウェアとしては、もっともよく使われているメーリングリストサーバのMailmanがあります。今回ご紹介するMailman 3は、Mailmanの新バージョンとしてリリースされました。
Mailman 3には、以下の特徴があります。
Mailman 3の特徴
メーリングリストの作成
購読者のメールアドレスをメーリングリストに登録します。メーリングリストのメールアドレス宛にメールを送ると、購読者全員にメールを配布することができます。
コマンドまたはウェブ上での管理
管理はコマンドラインで行うほか、Postoriusというコンポーネントを用いてウェブ管理画面からも行うことができます。ウェブ管理画面では、各ユーザ自身でメーリングリストへの登録や退会などの処理も可能です。
記事のアーカイブ
Mailman 3には、HyperKittyというメールアーカイブを行うコンポーネントがあります。メーリングリスト宛に送られた過去のメールを保存しておき、ウェブ管理画面から過去のメールを閲覧することができます。
Mailman 2との違い
Mailman 3は、以前のMailman 2から完全に書き直されほぼ別のソフトウェアとなっています。Mailman 3とMailman 2には以下のような違いがあります。
マルチドメインに対応
Mailman 2では、1台のサーバで複数ドメインを取り扱うのに問題がありました。一応複数ドメインを取り扱うことはできたのですが、メーリングリストのメールアドレスの「@」の前の部分が重複したメーリングリストを作れないという制限がありました。Mailman 3では、当初から複数ドメインを取り扱うことができるよう設計され開発されています。
REST APIが使用可能
Mailman 2では使えなかったREST APIも、Mailman 3では使用可能となります。REST APIを使うことで、メーリングリストの作成やメンバーの登録・退会をHTTP/HTTPSで行うことができ、他のシステムとの連携が行いやすくなります。
Mailman 3の問題点
Mailman 3は日本語対応に一部問題があります。
まず、管理画面の日本語化が完全ではありません。現時点でのメッセージの翻訳率は、ウェブ管理画面のPostoriousは19%、記事のアーカイブのHyperKittyは69%となっています。
また、検証の結果、メーリングリストに日本語のメールを送った場合に、問題が発生するケースがあることがわかりました。例えば、メール本文に半角カナや丸付き数字を含み、ISO-2022-JPでエンコードされている場合、ウェブアーカイブされたメールが文字化けしてしまいます。また、メールのSubject:に半角カナや丸付き数字を含み、ISO-2022-JPでエンコードされている場合、メーリングリストへの配送もエラーメールの返送も行われずメールが消えてしまうという事象が発生しました。後者は特に問題で、管理者がログファイルを監視するなど運用での対応が必要となります。
上記の通りMailman 3は日本語メールの取り扱いに問題があり、現時点では日本語環境での利用はお勧めできない状態です。
デージーネットでは今後、Mailman 3の日本語対応の改善状況について注視してまいります。
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