OSSの多機能チャットツール〜Zulip〜
OSS研究室 森 彰吾
今回は、OSSのチャットツール「Zulip」を紹介します。
Zulipとは
Zulipは、2012年にリリースされたオープンソースのチャットソフトウェアです。Zulipを使うことで、オンプレミス環境にチャットシステムを構築することができます。また、OSS版と製品版で機能差が無いという点も、Zulipの特徴の1つです。
Zulipの特徴
Zulipには、以下の特徴があります。
WEBブラウザがあれば利用可能
Zulipでは、全てのチャットの操作をWEBブラウザ上で行うことができます。特別なアプリを必要としないため、アプリのインストールが制限されている場合でも導入しやすいというメリットがあります。なお、モバイル端末の場合は、Google PlayやAppStoreで配信されているZulipアプリを使うこともできます。
会話形態の選択
Zulipでは、会話を行うチャットルームが、下記のような種類に分けられています。
- パブリック
誰でも参加可能なチャットルーム
- プライベート
招待されたメンバーだけが会話できるチャットルーム
- ダイレクト
個人間でのチャットルーム
さらに、Zulipならではの機能として、プライベートなチャットルームにおいて、過去の履歴を新しいメンバーに見せるかどうかを選択することができます。
話題の管理
一般的なチャットソフトウェアでは、特定の会話を行うためのチャットルームを作成し、参加したメンバーで会話をします。ただ会話するだけなら、このような使い方でも十分便利ですが、何を話したかを記録したり、後から会話の内容を探したりするのが難しい傾向があります。
一方Zulipでは、1つのチャットルームの中で、「トピック」と呼ばれる話題ごとの小さなチャットルームを作成することができます。これにより、会話のトピックごとに履歴が残り、何について会話しているかを整理しやすくなります。これは、同じメーリングリストアドレスを使い、件名のスレッドで話題を管理している状態に近いため、メールを多用している人にとっても受け入れやすい機能です。
多彩なメッセージ機能
一般的なチャットソフトウェアでは、メッセージ送信時、文字の装飾や絵文字を利用できますが、Zulipではさらに多くの機能が存在します。例えば次のような機能です。
- 簡易アンケート/簡易タスク一覧
チャット上に簡単なWEBフォームを設置することができます。他のユーザがチェックを入れることで、アンケートに回答したりタスクを完了状態にすることができます。
- WEB会議URLの生成
OSSのWEB会議システムである「Jitsi Meet」や「Big Blue Button」と連携して、WEB会議のURLを発行することができます。発行されたURLをチャットで送信することで、メンバーと同じURLでWEB会議を開始することができます。
- メッセージの予約配信
時刻を指定してメッセージを送る機能です。リマインダーなどに活用することができます。
Zulipの性能
Zulipの性能を検証したところ、1秒間で数百件のメッセージのやりとりに耐えられることがわかっています。例えば、1000人の利用者がいる環境で、瞬間的に100人がメッセージを送信し、その他の人がメッセージを受け取っても、問題なく動作するということです。そのため、比較的大きな規模の環境でも利用可能です。
Zulipの課題
Zulipは多くの機能を有したソフトウェアですが、いくつか課題もあります。
ひとつは、管理権限機能が弱いという点です。例えば、現状はユーザが一度作成したチャットルームの設定変更や削除は、管理者しか行えません。ただ、この点はZulipの開発プロジェクトでも管理権限の改善が計画されているようなので、今後に期待ができます。
また、Zulipは、基本的にシングル構成でしか動作できないという欠点があります。ロードバランシング構成などでスケーリングできないため、使う組織の規模によっては、複数のZulipサーバを用意するなどの工夫が必要です。
デージーネットでは
デージーネットでは、チャットソフトウェアとしてRocket.chatを既に利用しています。ただし、Rocket.chatのバージョン6から多くの機能制限が入ったため、利用形態によっては使いにくくなる可能性があります。そのため今後は、お客様の状況に合わせて、Rocket.chatだけでなくZulipもご提案に含めていくことを検討しています。
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