VMWareに代わる仮想プラットフォーム〜Proxmox VE〜
経営企画室 OSS企画チーム 森 彰吾
今回は、仮想プラットフォームのOSS「Proxmox VE」について紹介します。現在デージーネットでも紹介しているOSSの仮想基盤「oVirt」と同様、VMWareに代わるツールとして利用可能なソフトウェアです。
Proxmox VEとは
Proxmox VEはオープンソースの技術を集めて開発された仮想プラットフォームです。非常に多くの機能を持ちますが、特に管理面に優れています。
Proxmox VEの長所
Proxmox VEには、以下のような長所があります。
インストールの簡単さ
Proxmox VEは、ISOイメージで配布されています。OSインストールのような方法でハードウェアにインストールすることで、基本的な仮想基盤が完成するように作られています。
インストーラはグラフィカルな画面で操作可能で、設定する項目も、ネットワークやディスクの設定など基本的な内容となっています。通常、Linuxで仮想基盤をゼロから作る際は多くの知識を必要としますが、Proxmox VEは手間のかかる様々な手順を自動的に実施してくれます。
WEBブラウザで操作できる
Proxmox VEは、初期設定から日々の運用管理作業まで、幅広い操作をWEB UIで行うことができます。通常はコマンドラインでの操作が不要なため、直感的に仮想マシンの作成・削除などを行うことができます。
クラスタリングが容易
Proxmox VEは、複数台でのクラスタリング設定も、ISOイメージからのインストールとWEB UIからの設定で行うことができます。クラスタリングのための操作も簡単で、慣れれば数分(インストール待機時間を除く)で、クラスタにProxmox VEノードを追加することができます。
ストレージの管理が可能
Proxmox VEでは、WEB UIから分散ストレージのOSSであるCephを管理することができます。複数台のProxmox VEクラスタにCephストレージのクラスタを構成することも可能です。つまり、Proxmox VE + Cephを1台のハードウェアに同居させて、複数台並べていくハイパーコンバージド(HCI)構成を取ることができます。ただし、Cephの利用には専門的な知識が必要となるため、注意が必要です。
なお、Ceph以外にも、NFSやISCSI、ローカルストレージなど、様々なストレージを利用可能です。
VMWare ESXiから仮想マシンの移動が可能
VMWare ESXiとは、仮想基盤として有名なVMWare製品の1つで、1台の物理的なコンピュータを複数の仮想的なコンピュータに分割するハイパーバイザ(仮想マシンモニタ)です。仮想化環境を実現するツールとして高い人気を誇っていましたが、2023年にVMWare社がBroadcom社によって買収されたことで、2024年にはVMWare ESXiの無償版の提供は終了しています。
こうした中、Proxmox VEでは、VMWare ESXiから仮想マシンを移動するための仕組みとして、以下のような方法が用意されています。
- Proxmox VEからESXiに直接接続して仮想マシンを移動させる
- ESXiから仮想マシンをエクスポートして、Proxmox VEのコマンドでインポートする
上記から、環境に合わせてインポート方法を選択することができます。
その他の機能
Proxmox VEには、ここでは紹介しきれないほどの機能を持っています。
例えば次のような機能があります。
- Proxmox VEクラスタ、ノード、仮想マシンの階層ごとに設定可能なアクセス制御
- SDN(Software Defined Networking)機能
- LXCコンテナの管理
これらの機能の詳細は「Proxmox VE調査報告書」にて解説しています。調査報告書は、弊社ホームページから無料でダウンロード可能です。
Proxmox VEの課題
非常に多機能で管理面に優れたProxmox VEですが、いくつか課題もあります。
Debianのライフサイクル
Proxmox VEは、Debianと呼ばれるLinuxディストリビューションを元に作られています。基本的なソフトウェアはDebianのものを利用し、その上にProxmox VE独自の仮想環境を管理するためのソフトウェアを載せているイメージです。
Debianは、メジャーバージョンをリリースしてから約3年でサポート終了を迎えます。これに伴い、Proxmox VEも基本的には3年周期でメジャーバージョンが上がり、古いバージョンはサポート終了となります。1世代前のProxmox VE7は、2021年7月にリリースされたDebianを利用しており、Proxmox VE7のサポート終了は2024年7月でした。
このように、仮想プラットフォームとしては比較的寿命が短く、頻繁なメジャーバージョンアップが必要という課題があります。そのため、アップデート用の試験環境の準備や、ハードウェアを追加して過去のバージョンと最新バージョンを混在させるなどの対応が必要になります。
トラブル発生時の対処の難しさ
Proxmox VEは、管理が容易になるように設計・開発されています。通常運用時は非常に便利である一方、一度トラブルが発生するとコマンドラインでの対応が必要なケースがあります。
特にCephストレージを利用する場合、Ceph特有の知識・スキルが求められるため、安定稼働させるまでには様々な検証が必要になると考えられます。
デージーネットでは
デージーネットでは、仮想プラットフォームのOSSとして既にoVirtを扱っています。Proxmox VEとoVirtは、どちらも長所があるため、状況に応じた提案を行っていく予定です。
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