AlmaLinuxとは
AlmaLinux(読み方:アルマリナックス)とは、オープンソースソフトウェアのエンタープライズLinuxのディストリビューションである。AlmaLinuxは、CloudLinux社がスポンサーとなり、CentOS Linuxの代替版を目指して新たに立ち上げた開発者のコミュニティによって、管理および推進されている。CentOS 8の開発が2021年の末に終了されたことで、多くのシステムで利用されていたCentOSを利用し続けることが困難となり新しいRHELクローンの開発プロジェクトがいくつか発足した。そんな中、AlmaLinuxは他のプロジェクトと違い一足早く、2021年3月30日に正式版がリリースされた。CloudLinux社は、RHELやCentOS互換のCloudLinux OSを提供している実績のある安定した企業である。公式のサイトによると、AlmaLinuxの「Alma」とは、スペイン語やラテン語で「魂」や「精神」という意味である。
2022年5月には、RHEL9のリリースに合せてAlmaLinux9.0がリリースされている。
AlmaLinuxの特徴
AlmaLinuxの特徴は以下の記事でまとめて解説していく。
RHELやCentOSと同様に使用できる
AlmaLinuxは、RHELのクローンとして開発されているため、ユーザーはRHELやCentOSを使うのと全く同じように利用が可能であり、その事実に価値があると考えることができる。CentOS8サーバからAlmaLinuxに切り替えるツールもダウンロードが可能である。調査の結果、CentOS8サーバーからAlmaLinuxへの移行も、手順や設定に問題にあたる部分も見当たらず、1時間以内に移行が完了している。AlmaLinux調査報告書にインストールの手順やCentOS8からの移行方法について記載がある。
CentOSと同等以上の提供速度がある
2021年3月の正式版リリース以降、CentOSと同等以上のパッケージ提供速度がある。多くの利用者が懸念するセキュリティアップデートの公開時期について、CentOSと比較しても遜色ない速度で提供が行われている。他に、CentOSでは提供されていないセキュリティ情報の提供も行われている実績があるので、この点についてはCentOSよりもAlmaLinuxのほうが便利に利用することができる。
プロジェクトの円滑な運営
AlmaLinuxプロジェクトは、2021年に入ってから始まった新しいプロジェクトである。新しく開始されたプロジェクトは、プロジェクト体制が整うまで時間がかかったり、リリースの遅れなどが発生する場合がある。 CentOSプロジェクトも運営として長年継続している中、CentOS 6から7だったり、CentOS 7から8などメジャーであるバージョンがあがる際には、混乱や遅延が見られた。このような問題に対してこのプロジェクトはCentOSと同等レベルのパッケージ提供の速度を維持している。RHEL9のリリースに伴う対応においても、極めて短期間でAlmaLinux9.0がリリースされた。これは、CloudLinux Inc.の知見や技術を活かした運営ができているということである。
歴史
2020年12月8日にThe CentOS Projectが現行のCentOS 8の開発を2021年の末に終了して、今後はCentOS Streamの開発に注力することを発表した。しかし、2029年までを予定としていたCentOS 8のサポート期間が大幅に短縮されたことによって、The CentOS Projectのメンバーからは不満の声が上がった。この状況を受け、CloudLinux 社はCentOSに変わって、「Project Lenix」を発表した。 この背景から、Project Lenixはその後に「AlmaLinux」という名称が与えられて誕生した。Project Lenixは、「Red Hat Enterprise Linux 8」およびそれ以降と互換性を持ったLinuxディストリビューションの開発およびメンテナンスを行う。2022年5月には、RHEL9のメジャーアップデートに合わせてAlmaLinux9.0をリリースしている。
方針
オープンソースであり、コミュニティによって管理および推進されている。永久に無償のエンタープライズLinuxディストリビューションであり、長期的な安定動作と万全な製品グレードのプラットフォームに重点を置いている。AlmaLinux8のサポートは2029年まで、AlmaLinux9のサポートは2032年まで実行される。
総合評価
一定の安定性や安心感のあるOSである。またCentOSからの乗り換えが比較的に容易に行えるLinuxディストリビューションである。まだプロジェクト運営やパッケージリリースの速度を継続して観察する必要はあるが、乗り換え先のOSとして有力候補であることは明確になった。
CentOSの代替OS
現在、AlmaLinux以外にも代替OSとして検討されているディストリビューションは、以下が存在する。
- Rocky Linux
Rocky Linuxとは、コミュニティ主導で開発されているLinuxディストリービューションである。コミュニティ主導のため、特定の組織の方針に左右されにくく、企業の利益や販売方針の影響を受けにくい。
- Oracle Linux
Oracle Linuxとは、Oracle社が開発したRHELと互換性があるLinuxディストリービューションである。Oracle LinuxのOSサポートが不要であれば無料で利用することができる。
- Amazon Linux
Amazon Linuxとは、Amazon Web Services (AWS) のディストリービューションである。AWSによって提供されておりAWSで利用できるツールが初めからインストールされている。
- Ubuntu
Ubuntuとは、コミュニティにより開発されているLinuxディストリービューションである。Ubuntuは、セキュリティに配慮して設計されており、無償のセキュリティアップデートが、約9ヶ月間に渡って提供されている。
- Fedora CoreOS
Fedora CoreOSとは、Fedora Projectが、開発・提供するLinuxディストリビューションである。Fedora CoreOSは、コンテナ向けOSとして開発されている。
さまざまな企業やコミュニティが開発したディストリビューションが存在するが、この中でもRocky Linux、Oracle Linux、Amazon Linuxの3つのOSはRHELのクローンOSとして提供されている。
Rocky Linuxとの比較
Rocky Linuxとは、RHEL(Red Hat Enterpraise Linux)のオペレーティングシステムのソースコードを使用し、互換性を持つように設計されたLinuxディストリビューションである。Rocky Linuxという名称は、初期のCentOSプロジェクトの共同開発者であるRocky McGaugh(ロッキー・マクガウ)という人物の名前から抜き取って、Rocky Linuxと名づけられた。AlmaLinux同様、CentOS Linuxと同様の利用が可能となっている。AlmaLinux以外にもCentOSの後継として考えられるOSがあるが、その内の一つがRocky Linuxである。
AlmaLinuxはRocky Linuxよりも早く先に正式リリースされたこともあり、ミラーリポジトリやクラウド対応が早く行われている。またセキュアブートに関しても、AlmaLinuxは既に対応済みというのもポイントの一つである。AlmaLinuxはRocky Linuxよりも速く正式リリースが行われて、現在も精力的にシェア拡大に向け活動が行われている。なお、2022年5月のRHEL9のメジャーバージョンアップに伴うリリースでは、AlmaLinux9がRocky Linux9より 約2ヶ月先行してリリースされた。
Red Hat社による公開リポジトリ停止
これまでRed Hat社は、RHEL等で利用しているOSSのソースコードをリポジトリで一般公開していた。しかし、2023年6月、このリポジトリを停止し、ソースコードの公開は契約者のみに限定することを発表した。また、サブスクリプションの規約では、ソースコードの再頒布を禁止することも表明している。
この影響により、RHELのコードを元にパッケージを作成しているクローンOSは、RHELとの互換性を維持することが難しくなった。そこで、AlmaLinuxでは、RHELとの1対1の互換性を捨てて、可能な限り似たOSとなることを宣言している。そのため今後は、RHELとは別のパッチが適用されたソフトウェアが導入されていく可能性がある。
現状ではCentOSの代わりにどのOSを後継に選択するかという問題について決め手に欠ける。安定的に開発・プロジェクト活動の継続が行われていくかが焦点になると考えられるため、今後の動向を見守っていく必要がある。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、CentOSを利用しているユーザ向けに、CentOSからAlmaLinuxへの移行サービスを行っている。現在、CentOSでシステムを利用しているお客様には、ソフトウェアのアップデート作業にも影響が出てしまうため、AlmaLinuxへの変更を提案している。
CentOSからAlmaLinuxへサーバの移行を行う際は、迅速かつ正確な移行が実施できるように、手順を作成し、現行のシステムのサービス停止時間の測定などスムーズに移行ができるように調査も行っている。また、システムのバックアップツールを利用して想定外の動作が発生してもすぐにシステムを作業前の時点に戻せるよう安心して移行できるように準備を行っている。なお、AlmaLiunx以外にも、Rocky Linux、Ubuntuなど、お客様のニーズに合わせOSを選択し、提案している。
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