Grafana〜ダッシュボードツールでデータを可視化〜
Grafanaとは、オープンソースのダッシュボードツールソフトウェアです。BIツールとして、集めたデータをまとめて可視化するダッシュボードを作成し、ビジネスに活用する際に役立ちます。Grafanaを使えば、マウスのクリック操作だけで、Zabbixなど複数のデータソースを元にして可視化したデータを1つの画面上にまとめて表示することができます。また、Grafanaで可視化されたデータはアクセス制御を設定できます。そのため、企業の状況判断や意思決定に必要な情報として、データの分析結果を安心して活用することが可能です。このページでは、OSSのダッシュボードツールであるGrafanaの特徴や、Grafanaの導入メリットを紹介します。
- +
目次
ダッシュボードツールとは?
ダッシュボードツールとは、様々な方法で取得した情報を一つの画面上にまとめて可視化するためのツールで、BIツールの機能の1つでもあります。BIツールとは、蓄積されたデータを抽出・分析・加工し、データから予測を立てることで、ビジネスにおける意思決定を支援する機能を搭載したツールやシステムのことを指します。BIツールの「BI」は、Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)の略です。
近年、クラウドネイティブやコンテナのような分散型システムの利用が当たり前となる中で、ダッシュボードツールはさまざまな業界で注目されています。ダッシュボードツールを使って可視化する例として、システムの負荷などを監視するほか、現在の会社の経営状態や営業売上、自社の商品・サービスのマーケティング関連のデータなどがあります。集めたデータを一度に可視化することで、動向が見えやすくなり、ビジネスにおける判断に役立てることができます。
ダッシュボードツールの名前の由来は、自動車の運転席の前にあるダッシュボードから来ています。自動車のダッシュボードでは、速度計や距離計など、車の運転に必要な情報を運転者が確認しやすいように1つのボードにまとめられています。同様に、コンピュータシステムのダッシュボードでも、単一または複数のコンピュータで取得した情報を一つの画面上に視覚的にわかりやすく表示するツールのことを指します。
ダッシュボードツールの導入メリット
ダッシュボードを作成することで、経営の状態や営業売上、自社の商品・サービスの販売状況やマーケティング施策のデータなど、分析に必要なデータが一度に可視化されます。一般的に企業のデータを分析する際、Excelなどを使ってデータ収集をしたり、プログラムを自作したりすることも少なくありませんが、手作業で時間がかかるという点でデメリットがあります。一方、ダッシュボードツールでは、エクセルなどでデータを集計する場合と違い、各データがデータベースから自動で更新されます。そのため、企業内の課題は何か、その課題がどこにあるのかを継続して常にリアルタイムで知ることができ、経営戦略や意思決定を判断する際の重要な指標を把握・分析しやすくなるという効果があります。これにより、データに基づいて迅速に行動できるだけでなく、管理者や担当者の手間を削減し、業務効率を向上させる上でも効果的とされています。
ダッシュボードツールとレポート機能の違い
ダッシュボードツールの機能と似たものにレポート機能がありますが、データ集約の手法に違いがあります。レポート機能では集積されたデータを主に表形式で作成するのに対し、ダッシュボードツールではリアルタイムのデータを直感的なグラフィックでまとめて表示します。そのため、ダッシュボードツールでは、経営状態や売上などのデータの変化をより素早く確認することができます。
ダッシュボードツールの種類
ダッシュボードツールにはさまざまな種類があります。中には、フィルター機能、ドリルダウン分析、他のシステムとの連携、ユーザーの権限設定などを行えるものがあります。ダッシュボード作成に役立つツールを含む、無料で使える各種BIツールについては、以下のページで紹介しています。BIツールの導入メリット・デメリットや適切な選び方のポイントを説明しながら、各種BIツールの比較をしています。ユーザの用途やスキルによって適したツールも変わるため、BIツールを選ぶ際の参考にしてください。
「Grafana」とは
Grafanaとは、Grafana Labs社によって開発されているダッシュボードツールです。読み方は「グラファナ」です。複数のデータソースの統計情報を分析し、可視化したデータを一つのWEBインターフェースで確認することができます。Grafanaは、Apache 2.0 Licenseで公開されています。Linux、Windows、Macなどの主要なOSで動作可能で、公式のDockerのコンテナからも簡単にインストールすることができるため、人気のあるダッシュボードツールです。
Grafanaを利用するためには元のデータベースが必要です。例えば、リソースの使用状況などのデータを収集するツール(Prometheusなど)や、収集した大量のデータを集積するツール(Elasticsearchなど)と組み合わせて使われます。
また、Grafanaはオープンソースソフトウェアとして公開されているため、ソフトウェア自体の料金はかかりません。月額の費用などはかからず、ユーザ数によって価格が変わることが多い有料の製品に比べて、コストを抑えて導入することが可能です。さらに、Grafanaはオンプレミス/クラウドを問わず、システムを構築することが可能です。そのため、チームや組織の独自のポリシーに従って情報の保全を行うこともできます。
Grafanaの主な特徴
Grafanaには以下の特徴があります。
対応可能なデータソースの数が多い
Grafanaは、30種類以上の豊富なデータソースに対応しています。Grafanaのダッシュボードでは、複数のデータソースの統計情報を1つの画面上に配置し、チャートやグラフの作成をすることができます。そのため、様々なデータソースを扱う大きなシステムでも、管理者やオペレータはそれぞれのシステムの状況を簡単に把握できます。Grafanaが対応している主なデータソースは以下になります。
|
|
|
上記のソフトウェアにはデフォルトでインターフェースが用意されているものもあり、単体で監視を行うことも可能です。しかし機能が非常にシンプルだったり、複数のサーバのデータをまとめて監視することができなかったりします。Grafanaと連携することで、データをより分かりやすく表示することができます。
なお、Grafanaでは、PrometheusやZabbixと連携するためのアプリプラグインが用意されています。Prometheus専用のテンプレートも提供されているため、簡単にPrometheusのダッシュボードを作成しモニタリングすることが可能です。また、Grafanaの調査報告書では、Zabbixとの連携設定をより詳しく解説しています。
可視化と検索が可能
Grafanaは、他の類似プロダクトが各自で用意しているダッシュボードよりも、時系列グラフの可視化自由度が優れているという特徴があります。グラフや数値、表、テキストといった様々な要素を、マウスのドラッグ&ドロップの直感的な操作でビジュアル化できます。そのため、グラフの配置場所や大きさの変更、複数のグラフを重ねた統計情報の比較など、自由な構成で視覚的に見やすいダッシュボードを作成し、保存することが可能です。他にも、最近はExploreという検索機能が追加され、データの傾向なども確認できるようになりました。ただし、グラフのタイトルなどに日本語を使うことはできますが、表示は日本語化がされていないため、注意が必要です。
柔軟なアクセス制御設定
アクセス制限の機能を使うことで、作成したダッシュボードごとに、閲覧・編集を行えるユーザ、グループを設定することが可能です。権限を持つユーザが、グループ単位でのアクセス制限や、読み取り専用ユーザ、設定情報の編集可能ユーザなどを明確に分割して運用できます。社内で利用する際も、ユーザ個人、またはグループ単位でアクセス制限が設定可能です。不要なアクセスを制限し、ダッシュボードの閲覧・編集を一部のユーザに限定することで、機密性を維持しながら安心してデータを活用することができます。
Zabbixの利便性を向上
Zabbixとは、サーバー、ネットワーク環境、アプリケーションを集中監視するための、OSSの統合監視ソフトウェアです。Zabbixは、統合監視に必要な基本的な監視やログ監視、障害検出、通知機能を備えています。ZabbixとGrafanaを連携させることで、以下のようなメリットがあります。
複数のZabbixの統計情報をまとめて表示
Zabbix単体では、複数のZabbixサーバの状態を一つの画面で確認するような複雑な設定を行うことはできません。しかし、GrafanaとZabbixを連携することで、複数のZabbixサーバの統計情報を一つのWEBインターフェース上で確認することができ、関係者やオペレータの作業負担を軽減することができます。
Zabbixにログインすることなく統計情報が参照可能
Zabbixにログインできないユーザがいる場合でも、特定の統計情報だけを公開することができます。方法としては、Zabbixで取得した特定の統計情報だけを参照できるダッシュボードを作成し、そのダッシュボードだけにアクセスを限定したユーザを作成します。
Grafanaでできること
Grafanaには次のような機能があります。
ダッシュボードの共有機能
ユーザ同士でダッシュボードを共有することができる「Organization」という機能では、組織のメンバーと一緒にデータを探索することができます。別のユーザにダッシュボードを共有する場合は、共有したいユーザごとにOrganizationへ所属するよう追加することが必要です。追加されたユーザーは、同じOrganizationに属するユーザーが作成したダッシュボードへのアクセス権限が与えられています。
アラートの送信
アラート送信の機能では、すべてのアラートを一つの画面上で作成、管理することができます。そのため、各アラートを簡単に統合および一元化できます。MySQLやPostgreSQLなどの一般的なデータベースだけでなく、Graphite、Prometheus、Elasticsearch、InfluxDB、OpenTSDB、CloudWatchなどのデータソースもサポートされています。
プラグイン機能
公式やコミュニティには様々なプラグインが存在し、非常に充実しています。プラグインには、ZabbixやworldPingなど数多くのソフトウェアに対応したものが用意されています。ニーズや目的に応じた豊富なプラグインを追加することで、機能を拡張したりカスタマイズしたりすることが可能です。以下では、3つの主要なプラグインを解説します。
データソースプラグイン
データソースプラグインは、対応データソースを増やすためのプラグインです。導入することで、Grafanaが対応していないデータベースへも接続可能となり、データを読むことができます。このプラグインにより、より多くのソースから集めたデータを、ダッシュボードで可視化できるようになります。
パネルプラグイン
パネルプラグインを使用することで、データソースクエリによって返されたデータを、マップ、時計、グラフなどの視覚的なパネルに変換して、ダッシュボードに分かりやすく表示することができます。また、ダッシュボード間の移動や、スマートホームデバイスなどの外部システムを制御する際にもパネルプラグインを使用できます。
アプリプラグイン
アプリプラグインは、アプリケーションごとに特化したデータソースとパネルを組み合わせて提供しています。PrometheusアプリやKubernetesアプリなど、特別なデータソースを持つソフトウェアでも、データを参照しグラフ化することが可能です。例えば、Prometheusで保存した時系列データは、Grafanaを使用することでグラフ表示や分析を行うことができます。PrometheusにもデフォルトのWebインターフェースがありますが、非常にシンプルなものです。Grafanaには、Prometheus専用のテンプレートが提供されているため、簡単にPrometheusのダッシュボードを作成しモニタリングすることが可能です。
「Prometheus〜大規模なシステムを監視可能なOSS〜」へ
Grafanaの活用例
Grafanaの活用例として、収集した膨大な量のIoTデータを可視化するといった使い方もできます。IoTデバイスから収集したデータをJSON形式やInfluxDB形式などにして取り込み、グラフなどで可視化することで、データの分析や統計処理に役立てることができます。デージーネットでは、NoSQLデータベースのGridDBと連携して、実際にIoTアプリケーションで生成される大量のデータを把握・分析できるシステムを構築した事例があります。なお、IoTプラットフォームで使える可視化ツールとしては他にも、Elastic社が開発したオープンソースソフトウェアのKibanaなどがあります。
デージーネットの取り組み
「Grafana調査報告書」では、インストール方法やダッシュボードの作り方など、より詳しい使い方を公開しており、無料でダウンロード可能です。また今後は、エンジニアのような高い専門知識や技術を持っていない人でも扱えるMetabaseなど、各種ダッシュボードツールの動向をチェックし、よりお客様の要望にマッチしたシステムを提供していきます。
デージーネットではこれまで、ZabbixやIcinga2などのオープンソースソフトウェアを使った監視システムのソリューションをご提案し、導入した実績が多数あります。特に複数のソフトウェアが必要になるような大規模監視システムでは、Grafanaのような可視化ツールを利用してデータを可視化しています。そうすることで、より見やすく使いやすい監視システムを実現することができています。ZabbixやPrometheusと連携させた監視システムやBIツールを使ったシステムの構築・費用について知りたい方は、お気軽にご相談ください。
なお、運用開始後も安心してシステムをご利用いただけるように、当社でシステムを導入したお客様には、導入後支援サービスとしてOpen Smart Assistanceを提供しています。Open Smart Assistanceでは、ソフトウェアの使い方に関するQ&A、障害などの問題発生時の調査、最新のセキュリティ情報の提供などを行います。これらのサポートでは、ソフトウェア単独ではなく、システム全体に対するサポートを受けることができます。詳しいサポート内容は下記リンクをご覧ください。
デージーネットのGrafana活用例
デージーネットで開発したシステムでもGrafanaを活用しています。以下ではその例を紹介します。
DMARCレポートの可視化
メールの送信ドメイン認証の技術の1つであるDMARCを効果的に設定するために、DMARCレポートの可視化ツールとしてGrafanaを使用しています。parsedmarcというOSSを使ってDMARCレポートが添付されたメールを解析し、取得したデータをGrafanaで地図やグラフにして見やすく可視化することができます。これにより、送信者ドメイン認証が正しく実施されているか、自ドメインになりすましたメールが送られていないかなどが把握しやすくなり、適切なセキュリティ対策を実施することができます。なお、弊社が開発したDMARC可視化ツールは、アプライアンスサーバでも提供しています。一定期間のお試し版で機能や使い方を体験することも可能です。
トラフィック監視システム「OpenNFA」
OpenNFAとは、一定期間にネットワークを流れるデータのやり取りを収集するNetFlowという技術を活用して、収集したフローデータの蓄積・可視化を行うシステムです。このシステムはデージーネットで開発を行い、データを可視化するためにGrafanaを使用しています。OpenNFAを利用することで、ネットワークトラフィックのグラフ化や、1時間毎の通信量が多いIPアドレスをランキング形式で表示するなど、ネットワーク解析に必要な情報を分かりやすく把握することができます。近年、リモートワークの普及やクラウドサービスの利用増加によって、ネットワーク帯域不足によるトラブルも増えていますが、OpenNFAを使うことで、自社で必要なネットワークの帯域幅や、ネットワークパフォーマンスの最適化に役立てることができます。
なお、上記で紹介したシステムはOSSを組み合わせて実現しているため、通常の製品とは異なり、ソフトウェアやユーザのライセンス費用は一切かかりません。導入コストとしては最初の構築にかかる初期費用のみで、その後月額料金などは発生しません。そのため、一般的なクラウドサービスなどを利用する場合に比べ、ランニングコストを抑えることができる可能性があります。
情報の一覧「Grafana」
Grafana調査報告書
Grafanaは、ダッシュボードを構築するためのオープンソースソフトウェアです。Zabbixと連携することができ、複数のZabbixの統計情報を少ない手順で、ひとつのダッシュボードに表示することができます。本書では、現状を調査した結果を整理し、各項目でより詳しい使い方などを掲載しています。
Icinga2+Grafanaを利用した監視システム構築事例
教育機関のアクセスポイント等のネットワーク機器を監視する監視サーバを構築した事例です。Icinga2で取得したデータを可視化することで、一目で状況を確認、分析することが可能になりました。
GridDBとGrafanaを利用したIoTデータ収集システム構築事例
お客様は、電源管理システムのデータ管理をするため、収集したデータを可視化するシステムの導入を検討されていました。今回の導入事例では、膨大な量のIoTビッグデータを把握・分析するため、高速処理が可能なスケールアウト型NoSQLデータベースの商用版GridDBを選択し、Grafanaと併用した基本設計を提案しました。
Zabbix〜ログ監視も可能なOSSの監視ツール〜
Zabbixとは、サーバ、ネットワーク、アプリケーションを集中監視するための統合監視ソフトウェアです。Zabbixは、統合監視に必要な監視、障害検知、通知機能を備え、多数のプラットフォームに対応しています。
Prometheus〜大規模なシステムを監視可能なOSS〜
Prometheusとは、音楽配信サイトのSoundCloudにより開発・構築されたオープンソースソフトウェアの監視システムです。Prometheusでは、取得したすべてのデータを時系列データとして保存し、Grafanaを使用してグラフ表示や分析を行うこともできます。
OSSのおすすめ監視サーバ・監視ツール比較21選
監視コンソールを使うと、データをより有効な方法で可視化したり、利用者毎に表示内容を変えたり、異なる監視サーバから値を集計して表示することができるといったメリットがあります。本記事では、監視サーバを選ぶ際のポイントを説明し、おすすめの監視サーバソフトウェアについて紹介します。
BIツールとは?無料で使えるおすすめOSSの比較6選
BIツールとは、蓄積されたデータを集約し、共有・比較・分析などを行うことで、経営判断に必要なデータを有効活用できるツールです。BIツールを使って、現場のプロジェクト管理データのほか、財務状況や顧客別の業績など、様々な分野のデータをひと目で理解できるよう可視化することで、ボトルネックになっている業務を発見する際にも役立ちます。
IoTプラットフォームで使われるOSS「IoTデータの可視化」
IoTプラットフォームでは、収集・分析したあらゆるデータの結果を可視化するツールが使用されます。汎用的な可視化の機能を持つソフトウェアを使うことで、容易に短期間でデータを把握することができます。多様で大量なデータを直感的に分かりやすく可視化するためにはグラフィカルに表示したり、すばやくレポートを作成する機能がある可視化ツールが便利です。
NetFlowでネットワーク問題を解決〜OpenNFA〜
デージーネットではOSSを組み合わせ、低コストでネットワーク監視を導入することができる、Netflowを活用したトラフィック監視システム『OpenNFA(オープンエヌエフエー)』を開発しました。
parsedmarc〜DMARCレポート解析ツール〜
DMARCとは、電子メールにおける送信ドメイン認証技術の一つです。2024年2月から適用されたGoogleやYahoo!の「メール送信者ガイドライン」では、DMARCへの対応が必要であることを発表しています。ここでは、DMARCの設定を確認することができるDMARCレポート解析ツールparsedmarcを紹介します。parsedmarcとGrafanaを組み合わせることで、DMARCレポートを可視化することができます。