メールアーカイブシステムのおすすめOSS〜Messasy〜
メールアーカイブシステムとは、送受信したすべてのメールを別のサーバやストレージに保管するシステムのことをいいます。メールアーカイブシステムを導入することで、企業の内部調査、データ消失等のトラブル対策、社内の情報共有などに役立てることができます。
Messasyは、デージーネットが開発したオープンソースのメールアーカイブシステムです。Postfix, Dovecot, Roundcubeなど、他のオープンソースソフトウェアと組み合わせて使います。受信したメールをアーカイブし、WEBインタフェース上で検索・参照することができます。ここでは、メールアーカイブシステムのメリットや導入の注意点とともに、Messasyの詳細について解説します。
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目次
メールアーカイブシステムとは
メールアーカイブシステムとは、本来メールが保存される場所とは別のサーバに、メールを移動させるシステムのことをいいます。送信・受信したすべてのメールをサーバやストレージに一括でまとめ、保管するソフトウェアを、メールアーカイブソフトウェアといいます。サーバやストレージに保管されたメールは、検索機能を使って参照することで、必要な時に取り出すことができます。また、サーバの障害時に使用されるバックアップとは違い、保管されたメールは上書き保存されることがなく、無制限で利用できる点も特徴です。
現在、メールアーカイブ機能を持つソフトウェアとして知名度が高いのが、パソコンやスマホで気軽に使えるGmailです。Gmailでは、選択したメールをアカウントのユーザ自身でアーカイブし、必要な時にアーカイブ先で確認することができます。また、アーカイブされて受信トレイから消えたメールは削除されているわけではないので、再度受信トレイに戻すことも可能です。このようにGmailのアーカイブ機能は、ユーザ自身が手動で行い、個人の受信トレイの整理を目的として使う場合が多いです。
一方、ビジネス向けのメールアーカイブシステムは、コンプライアンスや緊急時の情報共有などに対応することを目的としています。そのため、メールサーバを通過するすべてのメールを対象に、メールを保存する機能を実現する必要があります。
メールアーカイブソフト導入のメリット
メールアーカイブソフトには以下のメリットがあります。
内部統制やコンプライアンス対策
メールアーカイブソフトでは自社のメールを一元管理できるため、トラブル発生時、保管された過去のメールをもとに迅速な調査が行えます。例えば、データの不正利用やメールによる情報漏えいなどが発生した際に、過去のメールのやり取りを確認し、原因究明・証拠確認に役立てることができます。また、監査や社内規定などの要請に応じて、特定のメールを過去に遡ってすぐに参照できる体制を整えておくことができます。
PCトラブル時のデータ消失防止
メールアーカイブソフトでは、全てのメールを対象に自動保管しているため、パソコンがクラッシュしたりサーバーがダウンした場合も本文や添付ファイルのデータ消失を防ぐことができます。また、誤ってメールを削除してしまった場合も、メールを復元して元に戻すことができます。
社内の情報共有
メールアーカイブソフトの検索機能を活用すれば、担当者が不在の場合でも必要なメールを確認することが可能です。社内のメールを共有することで、緊急を要するトラブルや担当者変更の引継ぎ業務の際に役立てることができます。
メールアーカイブソフト選択の注意点
メールアーカイブソフトを選択する際のポイントとして、次のような点に注意しておく必要があります。
セキュリティ対策
メールアーカイブソフトに保存されたメールの改ざんや削除、情報漏えいを防ぐため、十分なセキュリティ対策をする必要があります。そのため、セキュリティ強度の高いデータセンター内や社内のオンプレミス環境など、構築・設置する場所を検討する必要があります。また、メールアーカイブソフトに保存されたメールデータの暗号化や、関係ない人が閲覧できないようにするためのアクセス権限機能が搭載されているかといった点にも気を付け、セキュアなソフトウェアを選択し、大切なメールを保護することが重要です。
検索機能があるか
メールアーカイブソフトは、メールサーバのすべてのメールをアーカイブファイルへ移動します。大量のメールの中から目的のメールを探し出さなければならないため、メールがどこに分類されて保存されているかを分かるようにしておく必要があります。また、キーワードの入力や条件の絞り込み等による検索機能があると便利です。ただし、メールアーカイブソフトよって検索条件や検索速度などの性能が異なるため、用途に適した製品を選択する必要があります。
ストレージ容量
メールアーカイブは、長い期間が経過しても過去のメールは削除されず残っているため、大量のメールをアーカイブするために十分なストレージの容量が必要になります。データを圧縮して保存ができることや、保存期間を指定できるものなど、用途によって選択する必要があります。
以上の注意点を踏まえ、Messasyの特徴を紹介します。
Messasyとは
Messasyとは、Message Archive System(Messasy)の略で、メールを保存し、IMAPサーバを利用して検索・表示できるオープンソースソフトウェアです。Messasyを利用することで、管理者はWebブラウザ画面で保存されたメールを検索・表示できます。
Messasyは、通常のメール(Outlook,Thunderbirdなど)を閲覧するのと同じ方法で、保存したメールの検索・表示を行うことが可能です。すべてのメールを適切な状態で自動的に保管し、送受信者以外も管理や閲覧することができます。そのため、誤ってメールを削除してしまった際や、データの改ざん防止など、万が一のトラブルの備えとして活用できます。
また、Messasyには、条件を設定して保存するメールを限定したり、日付ごとや送信者のメールアドレスなどで複数のカテゴリに分類し、保存先のフォルダ内を整理する機能もあります。これらの機能を活用することで、保存された大量のメールから効率よく必要なメールを取り出すことが可能です。
Messasyの導入メリット
Messasyを導入することで以下のメリットがあります。
ライセンスフリーで、オンプレミス環境にも構築できる
Messasyはオープンソースソフトウェアのため、クラウドサービスのように月額費用や追加料金がかかる料金形態ではなく、導入時の初期費用のみで利用を開始することができます。OSSであるためユーザー数に制限は無く、ライセンスフリーで使い続けることができます。
また、クラウドサービスで提供されているメールアーカイブのサービスは、手軽に導入できるというメリットがある一方、外部サーバにメールを保管するためセキュリティ面の心配があります。一方でMessasyは、オンプレミス環境に構築できるため、自社内のサーバで安全にメールを保管することができます。セキュリティに関する自社のポリシーが決められている場合でも、方針に沿って運用することが可能です。さらに、複雑な設定は不要で、他のOSSとの連携も可能なため、様々な環境に導入できます。既に稼働中のメールサーバへ組み込むことも可能です。
メールの圧縮と暗号化が可能
Messasyは、アーカイブするメールを圧縮して保存することができます。そのため、アーカイブの容量を効率よく確保し、よりたくさんのメールを保存することができます。
また、Messasyにはメールを暗号化する機能があり、重要な機密情報を含んでいるメールを安全に保管することができます。パスワードZIPで保存するように設定もでき、メールの秘匿性を高めることが可能です。
Webインタフェースから保存したメールの閲覧・検索が可能
Messasy単体の機能ではアーカイブしたメールを見ることはできませんが、WebメールソフトのRoundcubeと連携することで、アーカイブされたメールをWEBインタフェース上で簡単に検索・参照することが可能です。Roundcubeは、アドレス帳、フォルダ操作、メッセージフィルタなど、一般的なメールクライアントに備わっている基本機能と同様の機能を提供しており、メールの管理を行いやすいのが特徴です。Roundcubeはオープンソースソフトウェアですが、国内ではデージーネットが「Roundcube商用サポート」を行っています。Messasyと連携させることで、管理者が常時メールをWebブラウザから参照し業務の効率化に役立てることができます。
「無料で使えるWebメールソフトのおすすめOSS〜Roundcube〜」へ
また、Messasyは、全文検索エンジンのオープンソースソフトウェアであるApache Solrと連携することで、保存したメールの検索機能を強化しています。これにより、大量のメールの中から、必要なメールを短時間で検索することが可能です。Apache Solrは、強力で高速な全文検索機能を持っており、フレーズ検索、ワイルドカード検索、ジョイン操作、グルーピングができる点が特徴です。さらに、大容量のデータに対応可能なので、膨大な量のメールを管理するうえで非常に効果的です。Apache Solrと連携させることで、メールの履歴を一つ一つ確認しながら探す手間を省き、業務時間の短縮に繋がります。
「Apache Solr〜データを高速で全文検索するOSS〜」へ
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、MessasyなどのOSSを使ったメールアーカイブシステムの構築サービスを行っています。ソフトウェア開発やこれまでの構築実績を活かし、お客様のご要望や利用環境をヒアリングした上で、最適なソリューションをご提案いたします。また、近年問題となることが多いメールの誤送信や返信ミスについて、これらを防止するためのOSSを組み合わせることで、情報漏えいのリスクが少なくなる仕組みも提案しています。弊社で構築を行った場合、Open Smart Assistanceという保守サービスに加入することができます。Open Smart Assistanceでは、Q&Aやセキュリティ情報提供、障害調査、回避を行います。
またデージーネットでは、Messasyを他のOSSと組み合わせ、ユーザ自身がアーカイブされたメールを閲覧することができるメールアーカイブシステム「AquaVault」を開発しました。AquaVaultでは、メールをWebインターフェースで閲覧できるほか、メール本文や添付ファイル内のキーワードを含めた全文検索を行うことができます。
情報の一覧
Messasy マニュアル
Message Archive System(Messasy)とは、メールを保存・検索するためのソフトウェアです。デージーネットが開発しオープンソースソフトウェアとして公開しています。ここではMessasyのインストール手順や使い方を説明しています。
Messasyを利用したメールアーカイブシステム構築事例
この記事では、Messasyを利用したメールアーカイブシステムの構築事例を紹介しています。過去のメールを確認するため、社内で送受信したメールをすべて保存しておきたいというお客様のご要望に対し、デージーネットからはMessasyの導入をご提案しました。
メールアーカイブシステム〜AquaVault〜
デージーネットが開発したAquaVaultでは、Messasyと他のOSSと組み合わせ、ユーザ自身がアーカイブされたメールを閲覧できるようになりました。監査や不正の抑止力の効果に加え、メールのバックアップとしても役立ちます。
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