Zulip〜OSSの多機能チャット〜
チャットシステムとは、離れた場所にいるメンバーやチームとネットワークを介してリアルタイムにコミュニケーションがとれるツールです。Emailよりも気軽に連絡をとることができ、社内のコミュニケーションを活性化させるツールとして導入が進んでいます。ここでは、オープンソースソフトウェアのチャットシステムZulipを紹介します。
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目次
Zulipとは
Zulipとは、OSSのチャットシステムです。SlackやMicrosoft Teamsのように他のユーザとリアルタイムに文字で会話することができます。Zulipは、2012年にリリースされ現在も開発が継続しているソフトウェアです。Zulipを利用することで、企業内のオンプレミス環境にチャットシステムを構築することが可能です。
Zulipの読み方
Zulipの読み方は、zoo-lipやzew-lip、カタカナで表現するとズーリップやジューリップと読みます。アクセントは、英語のtulipと同じです。開発コミュニティでは、Google 翻訳の音声読み上げでZulipを英語発音させた場合の音声がそれらしく聞こえるという話もあります。実際聞いた感覚では、やや日本語でズーリップと発音するのに近い発音でした。
Zulipの必要スペック
Zulipを利用するためには、以下のスペックが必要になります。
OS |
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CPUアーキテクチャ |
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スペック |
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Zulipの特徴
Zulipの特徴は以下になります。
WEBブラウザで利用が可能
Zulipは、WEBブラウザからログインすることで利用できます。専用のアプリケーションをPCにインストールする必要がありません。社内ポリシーでアプリケーションのインストールに制限がある場合でも利用することができます。
トピック形式で会話を管理
通常のチャットシステムの場合、グループに対して一つのルームでやり取りを行うことが多いですが、後から書いた内容を探すのに手間な場合があります。Zulipは、ストリームという単位でチャットルームを管理します。この一つのストリームの中で、トピックとして話題に応じて会話のグループを作成することができます。メールをスレッドで管理するような形式で表示され、話題に応じて新しいトピックで会話することで、会話の整理や履歴の検索がしやすくなります。
モバイルアプリの利用が可能
Zulipには、AndroidとiOSのモバイルアプリが存在します。Google PlayやApple Storeからダウンロードすることで、スマホやタブレットからの利用が可能になります。また、Zulip公式のプッシュ通知サービスに登録することで、プッシュ通知も行うことができます。インターネットに接続可能な環境であれば、制限なく通知を受けることが可能です。
WEB会議システムと連携
Zulipは、OSSのWEB会議システムと連携させることで、トークルームからWEB会議を行うことができます。現在は、WEB会議システムのJitsi MeetやBig Blue Buttonと連携することが可能です。トークの中にあるビデオカメラのアイコンをクリックすることで自動的に会議のURLが発行されます。作成しているグループに一人ずつ招待URLを共有する必要がなく、すぐにWEB会議を行うことができます。
Zulipの機能
Zulipには以下の機能があります。
チャットルーム
チャット上のグループやルームは、ストリームという単位で管理します。ストリームには、3つの作成方法があります。
パブリック | 誰でも参加可能 |
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プライベート | 招待されたユーザのみ参加可能 |
ダイレクト | 1対1の個人間のメッセージストリームやトピックを作成せず、 個人を指定してメッセージのやりとりが可能 |
プライベートを選択した場合、後から参加したユーザが過去のメッセージをみることができる、できないの選択をすることができます。
メッセージの送信
単純なメッセージを送付するだけではなく、多様な表現でメッセージを送信することができます。
- メンションしての送信
グループの中で特定の人宛てに返信したい場合に、メッセージの中に「@ユーザ名」や「@グループ」などを指定して送信します。メンションを指定することで、相手に音声通知やデスクトップ通知でメッセージを知らせることができます。
- Markdown方式での送信
Markdownを利用して、リッチなテキストを表現することが可能です。
- 文章の折りたたみ
長い文章などは、折りたたまれたメッセージとして作成することができます。
- ファイルのアップロード
メッセージフォームにファイルをドラッグ・ドロップすることでファイルをアップロードすることができます。アップロード可能なサイズは、デフォルトでは25MBになっています。
メッセージの予約
ユーザは、メッセージの送信を予約しておくことが可能です。日付や時間を細かく設定することができます。予約したメッセージは、確認・編集することも可能です。時間になると自動的にメッセージが送付されます。
ボット機能
ボット機能を利用することで、ボットに話しかけると、APIで連携した外部のサービスやプログラムと、情報のやりとりをすることができるようになります。ボットは擬似的なユーザとしてZulip上に存在します。ボットユーザは、Zulip全体だけでなく、設定によってユーザ個人が作成することも可能です。
ボットがシステムとやり取りする方法として以下の3種類があります。
- Zulip組み込みのボット
- 受信Webフック
- 発信Webフック
受信Webフックを利用することで、Slackから通知を受け取ることやZabbixからアラートを受け取るような使い方が可能になります。
アンケート機能
チャット内で簡単なアンケートを作成することができます。設問の選択肢は誰でも追加することができるので注意が必要ですが、グループ全員に向けてアンケートを行うことができるようになります。
タスクの作成
簡易的なタスク表をルームの中で作成することができます。完了したタスクにチェックをすると、打ち消し線が入り、完了タスクが下部に移動します。
権限管理
管理者は、ユーザ自身が、名前やメールアドレス、プロフィール画像を変更できないような設定をすることができます。その他にメッセージの編集やトークルームの作成ができる、できないの権限も操作可能です。操作権限は、管理者の他にユーザやゲストなど細かく分けることができます。
LDAP/SSO認証
LDAP認証やSAMLやOIDCを利用したSSO認証を行うことができます。その他にGoogle認証やGitHub認証、Apple認証も行うことが可能です。しかし現在、LDAPなどの情報とチャット内のグループを連携することはできません。
Zulip利用人数
デージーネットでZulipの検証を行った結果、利用者数が1000人いる場合の環境で瞬間的に100人がメッセージを送信して、他の人がメッセージを受け取ることが可能ということがわかりました。そのため、比較的大きな規模の組織であっても利用することが可能です。
Zulipの課題
多機能なチャットシステムのZulipですが、以下の課題があります。
スケーリングができない
一般的なサーバーの場合、複数台によるロードバランシング構成で処理性能を高めますが、Zulipでは単純なスケーリングを行うことができません。利用する組織の規模によって、複数のZulipサーバーを用意する必要があります。
操作の権限が限定的
一般ユーザが一度作成したチャットルームは、一般ユーザでは削除することができません。削除する場合は、管理者への依頼が必要になります。その他、一度作成したユーザも管理者は削除することができず、無効化しか行うことができません。
監査ログ取得機能がない
ユーザの会話などを監査する機能がありません。しかし、PostgreSQLに全てのメッセージが保管されているため、定期的にメッセージを取得することで監査ログとしてすることができます。ユーザがメッセージを削除してしまった場合は履歴が残らないため、ユーザが削除や編集を禁止するなどの運用が必要になります。
上記の課題から、チャットへの同時接続ユーザ数や具体的な利用方法などを導入前に調査した上で、サーバの構成などを検討する必要があります。デージーネットでは、Zulipの他にもOSSのビジネスチャットツールを取り扱っており、お客様の利用環境や用途に合った最適なシステム構成をご提案いたします。下記のページでは、OSSの他のビジネスチャットツールと比較した特徴を紹介しています。
デージーネットの取り組み
弊社では、OSSビジネスチャットシステムとして、Rocket.chatやMattermostを提供しています。しかし、Rocket.chatに関しては、オープンソース版のバージョン6より機能の制限が追加されました。そのため、場合によっては利用にも制限がかかる可能性があります。今回Zulipを調査し、利用できることが分かったため、今後はZulipの他に、Rocket.chatやMattermostを比較検討し、お客様のご要望に合わせたビジネスチャットシステムをご提供します。Zulipのインストール方法など詳しい情報は、Zulip調査報告書に掲載しています。
情報の一覧
Zulip調査報告書
Zulipとは、1対1やグループでのトークを行うことができるチャットシステムです。本書は、Zulipについて調査した内容をまとめたものです。
ビジネスチャットツールのおすすめOSS比較4選
ビジネスチャットとは、メールや電話の代替手段としてチャット形式のコミュニケーションツールとして活用されているサービスのことです。ここでは、主要なOSSのビジネスチャットツールである「Rocket.Chat」、「Mattermost」、「Nextcloud Talk」、「Zulip」の主な特徴について紹介します。
Mattermost〜OSSのチャットツール〜
Mattermostとは、オープンソースソフトウェアのビジネスチャットツールです。社内でコミュニケーションをとるために1対1およびグループ間のメッセージ交換やワークフロー管理、プロジェクトの進捗管理を行うことができます。
Mattermost調査報告書
Mattermostは、オープンソースソフトウェアのチャットシステムです。本書は、性能検証や削除された機能を追加し、Mattermostについて調査した内容をまとめたものです。
Rocket.Chat〜オンプレ用のチャット〜
現在、働き方改革の推進やテレワークの普及により、会社内の連絡などに従来のメールや電話というコミュニケーションツールではなく、「チャット」を利用する場合が多くなっています。ここでは、オンプレミス環境にシンプルなチャットシステムを構築できるOSS「Rocket.Chat」のメリットやシステム構成について紹介します。
Rocket.Chat調査報告書
Rocket.Chatとは、オープンソースソフトウェアのビジネスチャットツールです。本書は、Rocket.Chatのインストール方法や基本的な使用方法を調査した結果をまとめたものです。新しくRocket.Chat バージョン6.0について調査した内容も掲載しています。
テレワークで使えるおすすめのOSS12選
働き方改革を促進するために、テレワーク環境の整備や生産性の向上などが求められています。ここではテレワークで使えるOSSについて紹介します。