CentOS Streamとは
CentOS Streamとは、2020年12月に発表された、CentOSの開発方針の変更により新たに開発されたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のアップストリームOSである。元々は、Red Hat Enterprise LinuxのクローンOSとして存在していたCentOSの後継の位置づけにあるOSだ。つまり、RHELより先にCentOS Streamがリリースされ、次にCentOS Streamの更新内容をもとにRHELが作られるという流れになっている。
CentOS Streamは、オープンソースコミュニティのメンバーとRed Hatの開発者と連携して開発をしている。Red Hatが開発を支援しているOSは、Fedoraプロジェクト開発のOSであるFedoraがあり、Fedoraも先進的な機能の開発・テストをするために利用されている。CentOS Streamは、このFedora ProjectのOS開発者とも連携している。
CentOSとの違いは?
CentOSとは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と機能的に互換性があり、同様に使えることを目指した、無償で利用が可能なLinuxディストリビューションである。RHELのクローンOSとも呼ばれ、AlmaLinuxやRocky Linuxの前身となるOSである。Linuxのディストリビューションの中で、CentOSは、RHELの商標・商用ソフトウェアを取り除き、OSSの部分を再ビルドして作られたOSである。
一方で、CentOS Streamは、RHELよりも新しいバージョンのソフトウェアを含むOSである。RHELのクローンではなく、RHELのマイナーアップデートが先に適用されるテストOSで、以下の違いがある。
リリース方式が異なる
RHELは8.1, 8.2のようにバージョンの更新が行われるが、CentOS Streamはローリングリリース方式を採用しており、CentOS Stream 9というバージョンのまま、最新のソフトウェアが導入されている。また、基本的に最新のマイナーバージョンになるため、古いバージョンのソフトウェアは不定期に削除されていく。前のバージョンに戻したい場合に削除されていて戻せないという場合もある。
CentOS Stream利用メリット
次のような利用メリットが挙げられる。
RHELの最新パッケージを試せる
RHELのマイナーアップデートが先に適用されるテストOSのため、RHELに組み込まれる前の最新のパッケージや機能をいち早く試すことができる。定期的なメジャーバージョンアップではなく、随時新しいパッケージがリリースされ、システムが常に最新の状態に保たれる。
安定したコミュニティ
Red Hatの開発者やエンジニア、コミュニティメンバーが共同で開発を進めており、活発なコミュニティが特徴である。そのためフィードバックループが短縮され、各所からの意見を取り入れやすくなっている。
CentOS Stream利用デメリット
メリットがある一方で、利用していくには以下のようなデメリットがある。
バグが含まれる可能性がある
随時新しいパッケージがリリースされているため、最新のパッケージにはバグが含まれている可能性がある。
EOLが早い
CentOS Stream 8は、2019年9月に発表され、2024年5月31日にサポート終了されている。CentOS Stream 9 は、2021年12月に発表され2027年にサポート終了予定となっている。どちらも約5年の期間でEOLである。
CentOS Stream 10の変更点
2024年10月、CentOS Stream の最新バージョンは9である。現状バージョン 10は公式のリリース情報が公開されていないが、開発中のプレリリース版が、2024年6月に一般に公開されている。CentOS Stream 10はRHELのアップストリームにあたるOSであるが、開発段階のCentOS Stream 10を調査することにより、次にリリースされるRHEL10の内容を推測することが可能である。そのため、今後に備えたシステム構成を検討する際に役立つと考えられる。しかし、まだ開発中ということもあり、削除されたように見える機能が、あとから一部追加されるなどのこともあり得るため、確定的な情報ではないということに注意する必要がある。
CentOS Stream 10で追加されたソフトウェア
- Kea:DHCPサーバ
Keaとは、ISC(Internet Systems Consortium)によって開発されたオープンソースのDHCPサーバである。Keaは、RHEL9系まで広く使われていたISC DHCPが開発を終了したため削除されていると考えられる。そして、代わりとしてISC(Internet Systems Consortium) が、数年前から新たに開発を行っているKea(DHCP)を採用していると考える。
- Valkey:キー・バリュー型のDB
Valkeyは、キー・バリュー型DBであるRedisからフォークしたソフトウェアである。Redisは、様々なソフトウェアと連携して動作するソフトウェアだが、昨今ライセンスが変更になり、次期OSではValkeyが採用されたと考えられる。ValkeyはRedisのフォークということもあり、ほぼ同じように利用が可能である。ライセンスがOSSのライセンスであることや、管理団体がLinux Foundationと呼ばれる比較的信頼できる団体であることも、採用されたポイントと考えられる。
「OSSのRedisに代わるデータベース〜Valkey〜」へ
- wget2
wget2とは、Webサーバからコンテンツをダウンロードするツールであり、コマンドラインでのwebクライアントであるwgetの後継ツールである。wget2は、HTTP、HTTPS、FTP、FTPSを使ってファイルの取得をする。特徴として、Wget1よりも高速にダウンロードすることができる。
CentOS Stream 10で削除されたソフトウェア
- ISC DHCP:DHCPサーバ
ISC DHCPとは、DHCPの機能を提供するオープンソースソフトウェアである。開発元のISCは2022年に、ISC DHCPのメンテナンスを終了することを発表し、ISC DHCPにおけるDHCPクライアント、DHCPリレーエージェントの機能の開発・サポートを終了している。
- Bacula関連ツール:バックアップ関連ツール
Baculaとはバックアップシステム機能を持つオープンソースソフトウェアである。無償の「Bacula Community Edition」と有償の「Bacula Enterprise Edition」が開発されている。BaculaはLinux, Windows, MacOSなどの複数のOSに対応し、データ管理にはMariaDBやPostgreSQLなどのデータベースを使用するため、多数のメディアやファイルを高速に管理することができる。
- GlusterFS:分散ファイルシステム
GlusterFSは、Red Hat社が提供していた「Red Hat Gluster Storage」や「Red Hat Virtualization」等のインフラサービスで利用されていた分散ファイルシステムである。削除された理由としてRed Hat社がこれらのサービス提供を終えたことが要因になっていると考えられる。
その他に確認できた変更点として、RHEL8/9の時点でサポートを終了したmailman2(メーリングリストアプリ)について、2024年8月に調査した時点ではmailman3などのメーリングリストアプリは採用されていない。
その他に、管理ツール類がアップデートされており、IPアドレスの表示コマンドなどが、カラーリングされて表示されるようになっている。詳しいレポート内容は、CentOSStream10-pre調査報告書にまとめて掲載している。本記事ではCentOS Stream 10のインストール方法や変更点についてより詳細に解説している。資料は無料でダウンロード可能である。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、CentOS Stream 10で調査した内容も踏まえ、追加して採用されたDHCPサーバのKeaやRedisの代替となるソフトウェアのValkeyの調査・採用そして、新しいメーリングリストシステムの調査・検証や切り替えを行い、お客様へ導入を行っている。今後、本リリースに向けて、さらに機能が変化することも考えられるため、本リリース以降に再度調査を実施し、セミナーでのLinuxOSの最新情報の公開や、調査報告書の提供を通して、Linuxユーザへ情報提供を行っていく。
また、多くのシステムで運用されているCentOSは、2024 年に現行のすべてのバージョンのサポートが終了しており、不具合や脆弱性の修正、セキュリティパッチが提供されなくなるため、今後利用し続けるにはリスクの高い状況になってきている。そのためデージーネットでは、CentOSを利用しているユーザに向けて、代替の候補であるAlmaLiunx、Rocky Linuxや、RedHat、Ubuntuなどのその他LinuxOSへの移行を提案して対応を行っている。お客様の環境やご要望に合わせて最適なOSの選択肢を提供している。
【カテゴリ】:OS  
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