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CentOSの代替えOS〜AlmaLinux〜

AlmaLinuxとは、オープンソースソフトウェアのLinuxディストリビューションです。CentOSのサポート終了を受けて開発されたRed Hat Enterprise LinuxのクローンOSで、CentOSの代替として注目されているOSの1つです。ここでは、他の代替OSと比較したAlmaLinuxの特徴や、今後の動向について解説します。

AlmaLinuxとは

AlmaLinuxは、無料で利用可能なRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンで、CloudLinux Inc.という企業が母体になって開始されたプロジェクトです。CloudLinux Inc.は、既にRHEL/CentOS互換のCloudLinux OSを提供している実績のある安定した企業です。この知見を活かしてAlmaLinuxの開発を行っています。ただし、CloudLinux Inc.はスポンサーの立場で、AlmaLinuxは独立したコミュニティによって開発されていると表明されています。AlmaLinuxは、RHELと1対1のバイナリ互換のOSであること、オープンソースであること、使用制限がないこと、AlmaLinux8を2029年までサポート管理することを目指しています。

ログイン画面

AlmaLinuxの開発背景

今までRHELのクローンOSとしては、CentOSがスタンダードでした。しかし、2020年12月8日、CentOSプロジェクトがCentOS8のサポートを2021年12月末で終了することをアナウンスしました。また同時に、CentOSプロジェクトはCentOS Streamと呼ばれるRHELの開発版に位置づけられるOSに注力していくことになりました。しかし、CentOS Streamは完全なRHELクローンではなく、安定性に疑問が残るOSでした。そのため、多くのシステムで利用されていたCentOSは、今後は実質的に利用し続けることが困難になりました。

この流れを受けて、新しいRHELクローンの開発プロジェクトがいくつか発足しました。AlmaLinuxはその中の1つです。複数のプロジェクトが発足する中で、AlmaLinuxは他のプロジェクトと違い一足早く、2021年3月30日に正式版がリリースされました。

AlmaLinuxの特徴

AlmaLinuxの特徴は以下になります。

AlmaLinuxの使用感

RHELのクローンとして開発されているため、RHELやCentOSと全く同じように利用が可能です。全く同じであることが求められるOSであるため、その事実に価値があると考えることもできます。

インストール画面

CentOSと同等以上のパッケージ提供速度

多くのユーザーが懸念するセキュリティアップデートの公開時期については、CentOSと比較して遜色ない速度で提供が行われていました。特に正式リリースから1ヶ月経過した5月の段階では、CentOSよりも早くリリースが行われているパッケージも存在しているケースもありました。さらにCentOSでは提供されていないセキュリティ情報(updateinfo.xml)の提供も行われているため、この点ではCentOSより便利に利用することができます。

AlmaLinuxプロジェクトの円滑な運営

AlmaLinuxプロジェクトは2021年に入ってから始まった新たなプロジェクトです。このような新興プロジェクトは、プロジェクト体制が整うまでリリースの遅れなど発生するケースがあります。CentOSプロジェクトも運営として長年継続しているなかで、CentOS6から7や、7から8などメジャーバージョンアップに際しては、混乱や遅延が見られました。この点、AlmaLinuxに関しては正式リリースから1ヶ月(2021年5月調査時点)ですが、CentOSと同等のパッケージ提供速度を維持しています。これは母体であるCloudLinux Inc.の知見や技術を活かしきって運営ができているという見方もできます。ただし、このリリース速度が今後、維持できているかは継続して観察していく必要があります。

CentOSからの移行が可能

比較的複雑な構成のCentOSサーバからAlmaLinuxへの移行を検証した結果、1時間以内に移行が完了し、手順や設定で問題にあたる部分も見当たりませんでした。今回の検証では、CentOSのディストリビューションで提供されていないソフトウェア・カーネルモジュールも動作させた状態で検証を行いましたが、その点も問題もありませんでした。全てのソフトウェアや全ての構成で全く問題が出ないとは言えませんが、一定の安定性があることを確認することができました。

AlmaLinuxとCentOS代替OS

AlmaLinuxの他にもRHELのクローンOSとして提供されているOSはいくつか存在します。

  • Oracle Linux

    Oracle社が提供しているRHELをベースとしたLinuxディストリビューション

  • Amazon Linux

    AWS用に提供されているLinuxディストリビューションでオンプレミスでも利用が可能

  • Rocky Linux

    AlmaLinux同様、2021年に現れたRHELをベースとしたLinuxディストリビューションで、CentOSプロジェクトの創始者が発足したプロジェクトで運営している。2021年4月にRC版をリリース

  • MIRACLE LINUX

    サイバートラスト株式会社が提供する、Red Hat Enterprise LinuxのクローンOS

Rocky Linuxとの比較

Rocky Linuxは、AlmaLinuxよりも遅れてリリースされたため、ミラーリポジトリ数がAlmaLinuxに比べ少なく、クラウド対応も遅れています。PowerPC対応をしていないことやセキュアブート対応をしていないなどの違いがあります。その他にCentOSからの移行などについて特に違いはありません。2022年5月のRHEL9のメジャーバージョンアップに伴うリリースでは、AlmaLinux9.0がRocky Linux9より約2ヶ月先行してリリースされました。

Rocky Linuxの詳細ページでは、2023年7月時点で比較したRockey LinuxとAlmaLinuxの特徴を紹介しています。

AlmaLinuxとMIRACLE LINUXの共同開発

2023年5月22日にサイバートラスト社が、AlmaLinuxとの共同開発を発表しました。MIRACLE LINUX 10からは、AlmaLinuxに加わり、AlmaLinux 10の開発やサポートを行っていくということです。サイバートラスト社によるAlmaLinuxサポートは、2023年6月1日より開始されました。パッチ提供含む16年間のサポートを発表しています。日本語にも対応しています。

CentOS代替OSの今後

AlmaLinux以外にもその他、RHELをベースに作られているOSは複数存在します。これらのOSを大別すると以下の2種類に分けられます。

  • 企業が主体で開発されているOS
  • コミュニティベースで開発されているOS

Oracle LinuxやAmazon Linuxは企業に開発されているOSです。CentOSが終了した背景に、Red Hat/IBMの意向が強く影響していると言われているため、CentOSからの乗り換え先のOSとして、コミュニティベースであることが重要視されています。AlmaLinuxはコミュニティベースを謳っているものの、背後にCloudLinux Inc.がスポンサーとして存在しています。またコミュニティベースとはいえ、スポンサーがついていることに変わりはありません。今後大手のスポンサーが付いたりした場合に、コミュニティの動向が左右される可能性はあります。

Red Hatの公開リポジトリ停止

2023年6月21日に、Red HatがRHEL等で利用しているOSSのソースコードを一般公開しているリポジトリを停止し、ソースコードの公開は契約者のみに限定すると発表しました。またサブスクリプションの規約にて、ソースコードの再頒布を禁止しました。AlmaLinuxは、RHELのソースコードからのパッケージを作成しているため、一般公開されなくなったことで、クローンOSを作成できない可能性がでてきました。その発表から、AlmaLinuxでは、RHELとの1対1の互換性を捨てて、可能な限り似たOSとなることを宣言しました。そのため、RHELとは別のバージョンのソフトウェアが導入される可能性があります。

AlmaLinuxの情報確認

AlmaLinuxの環境情報、セキュリティ情報、アップデート情報について紹介します。

AlmaLinux環境情報

AlmaLinuxのリポジトリは、2021年5月12日現在、既に33ヶ国に存在しています。日本でも8件のミラーサイトが存在しています。yumコマンドでもミラーサイトを自動探査するようになっているため、場所などに応じて最速のミラーを使うことができます。

リポジトリ画面

yumによるセキュリティ情報確認

AlmaLinuxでは、yumリポジトリでソフトウェアのアップデート情報(updateinfo.xml)が提供されています。これによりyumコマンドで、パッケージ毎のセキュリティ情報を確認できたり、脆弱性のレベルによって選択的にセキュリティアップデートができます。

バージョンのリリースやアップデート情報

RHELは定期的にマイナーバージョンが上がっていきます。過去、CentOSもこのマイナーバージョンリリースに合わせてバージョンが上がっていきましたが、マイナーバージョンアップの時期にタイムラグがありました。RHEL8.4がリリースされる際、AlmaLinuxもCentOSと同様な状態が想定されていましたが、すぐにAlmaLinux8.4がリリースされました。タイムラグがあまりなく比較的はやくリリースされていることがわかります。

またAlmaLinuxでは、サイト内でアップデートに関する情報の通知が行われています。まだサイトは、情報が記載されたHTMLがWebページに配置されているだけの状態ですが、バグフィックスやセキュリティアップデートに関するまとまった情報が存在するため、セキュリティ情報の確認はCentOSよりも行いやすくなっています。

RHEL9への対応

2022年5月、RHEL9のリリースに伴いAlmaLinux9.0がリリースされました。マイナーバージョンアップ同様、RHELのメジャーバージョンアップに伴うリリースも、他の代替OSより一足先に順調に行われました。

デージーネットの取り組み

デージーネットの調査では、AlmaLinuxが一定の安定性や安心感のあるOSであること、CentOSからの乗り換えも比較的容易に対応できることが分かっています。しかし、2023年6月のRHELのソースコードの一般公開の停止発表により、リリースの遅れや一対一のバイナリ互換が維持できない可能性があります。

デージーネットでは、LinuxOSを利用してサーバー構築をしています。LinuxOSは、安定して開発・プロジェクト活動の継続や開催が行われていくかが焦点になると考えられるため、今後の方針や動向にも注意していきます。CentOSからの乗り換え先を検討中の方や移行にかかる費用を知りたいお客様は、お問い合わせください。

なお、デージーネットでは2023年7月、今後利用したいLinuxOSについてアンケート調査を実施しました。今回の結果と、2022年7月に実施した同アンケートの結果を比較し公開しています。また、2023年にAlmaLinux9とRocky Linux9についての書籍も出版しています。

「関連情報の一覧」

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