- CentOSの代替えOS
〜AlmaLinux〜 - ここでは、AlmaLinuxの特徴や、他のCentOS代替OSとの比較、今後の動向について解説いたします。
- CentOS6/7からAlmaLinuxへの移行サービス
- デージーネットでは、CentOS7のサポート終了に伴い、CentOS利用ユーザに向けて移行サービスを行っています。
AlmaLinuxとは、オープンソースソフトウェアのLinuxディストリビューションです。CentOSのサポート終了を受けて開発されたRed Hat Enterprise LinuxのクローンOSで、CentOSの代替として注目されているOSの1つです。ここでは、他の代替OSと比較したAlmaLinuxの特徴や、今後の動向について解説します。
AlmaLinuxは、無料で利用可能なRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンで、CloudLinux Inc.という企業が母体になって開始されたプロジェクトです。CloudLinux Inc.は、既にRHEL/CentOS互換のCloudLinux OSを提供している実績のある安定した企業です。この知見を活かしてAlmaLinuxの開発を行っています。ただし、CloudLinux Inc.はスポンサーの立場で、AlmaLinuxは独立したコミュニティによって開発されていると表明されています。AlmaLinuxは、RHELと1対1のバイナリ互換のOSであること、オープンソースであること、使用制限がないこと、AlmaLinux8を2029年までサポート管理することを目指しています。
今までRHELのクローンOSとしては、CentOSがスタンダードでした。しかし、2020年12月8日、CentOSプロジェクトがCentOS8のサポートを2021年12月末で終了することをアナウンスしました。また同時に、CentOSプロジェクトはCentOS Streamと呼ばれるRHELの開発版に位置づけられるOSに注力していくことになりました。しかし、CentOS Streamは完全なRHELクローンではなく、安定性に疑問が残るOSでした。そのため、多くのシステムで利用されていたCentOSは、今後は実質的に利用し続けることが困難になりました。
この流れを受けて、新しいRHELクローンの開発プロジェクトがいくつか発足しました。AlmaLinuxはその中の1つです。複数のプロジェクトが発足する中で、AlmaLinuxは他のプロジェクトと違い一足早く、2021年3月30日に正式版がリリースされました。
AlmaLinuxの特徴は以下になります。
RHELのクローンとして開発されているため、RHELやCentOSと全く同じように利用が可能です。全く同じであることが求められるOSであるため、その事実に価値があると考えることもできます。
多くのユーザーが懸念するセキュリティアップデートの公開時期については、CentOSと比較して遜色ない速度で提供が行われていました。特に正式リリースから1ヶ月経過した5月の段階では、CentOSよりも早くリリースが行われているパッケージも存在しているケースもありました。さらにCentOSでは提供されていないセキュリティ情報(updateinfo.xml)の提供も行われているため、この点ではCentOSより便利に利用することができます。
AlmaLinuxプロジェクトは2021年に入ってから始まった新たなプロジェクトです。このような新興プロジェクトは、プロジェクト体制が整うまでリリースの遅れなど発生するケースがあります。CentOSプロジェクトも運営として長年継続しているなかで、CentOS6から7や、7から8などメジャーバージョンアップに際しては、混乱や遅延が見られました。この点、AlmaLinuxに関しては正式リリースから1ヶ月(2021年5月調査時点)ですが、CentOSと同等のパッケージ提供速度を維持しています。これは母体であるCloudLinux Inc.の知見や技術を活かしきって運営ができているという見方もできます。ただし、このリリース速度が今後、維持できているかは継続して観察していく必要があります。
比較的複雑な構成のCentOSサーバからAlmaLinuxへの移行を検証した結果、1時間以内に移行が完了し、手順や設定で問題にあたる部分も見当たりませんでした。今回の検証では、CentOSのディストリビューションで提供されていないソフトウェア・カーネルモジュールも動作させた状態で検証を行いましたが、その点も問題もありませんでした。全てのソフトウェアや全ての構成で全く問題が出ないとは言えませんが、一定の安定性があることを確認することができました。
「CentOS8からAlmaLinuxへのOS移行事例」はこちら
AlmaLinuxの他にもRHELのクローンOSとして提供されているOSはいくつか存在します。
Oracle社が提供しているRHELをベースとしたLinuxディストリビューション
AWS用に提供されているLinuxディストリビューションでオンプレミスでも利用が可能
AlmaLinux同様、2021年に現れたRHELをベースとしたLinuxディストリビューションで、CentOSプロジェクトの創始者が発足したプロジェクトで運営している。2021年4月にRC版をリリース
サイバートラスト株式会社が提供する、Red Hat Enterprise LinuxのクローンOS
Rocky Linuxは、AlmaLinuxよりも遅れてリリースされたため、ミラーリポジトリ数がAlmaLinuxに比べ少なく、クラウド対応も遅れています。PowerPC対応をしていないことやセキュアブート対応をしていないなどの違いがあります。その他にCentOSからの移行などについて特に違いはありません。2022年5月のRHEL9のメジャーバージョンアップに伴うリリースでは、AlmaLinux9.0がRocky Linux9より約2ヶ月先行してリリースされました。
Rocky Linuxの詳細ページでは、2023年7月時点で比較したRockey LinuxとAlmaLinuxの特徴を紹介しています。
2023年5月22日にサイバートラスト社が、AlmaLinuxとの共同開発を発表しました。MIRACLE LINUX 10からは、AlmaLinuxに加わり、AlmaLinux 10の開発やサポートを行っていくということです。サイバートラスト社によるAlmaLinuxサポートは、2023年6月1日より開始されました。パッチ提供含む16年間のサポートを発表しています。日本語にも対応しています。
AlmaLinux以外にもその他、RHELをベースに作られているOSは複数存在します。これらのOSを大別すると以下の2種類に分けられます。
Oracle LinuxやAmazon Linuxは企業に開発されているOSです。CentOSが終了した背景に、Red Hat/IBMの意向が強く影響していると言われているため、CentOSからの乗り換え先のOSとして、コミュニティベースであることが重要視されています。AlmaLinuxはコミュニティベースを謳っているものの、背後にCloudLinux Inc.がスポンサーとして存在しています。またコミュニティベースとはいえ、スポンサーがついていることに変わりはありません。今後大手のスポンサーが付いたりした場合に、コミュニティの動向が左右される可能性はあります。
2023年6月21日に、Red HatがRHEL等で利用しているOSSのソースコードを一般公開しているリポジトリを停止し、ソースコードの公開は契約者のみに限定すると発表しました。またサブスクリプションの規約にて、ソースコードの再頒布を禁止しました。AlmaLinuxは、RHELのソースコードからのパッケージを作成しているため、一般公開されなくなったことで、クローンOSを作成できない可能性がでてきました。その発表から、AlmaLinuxでは、RHELとの1対1の互換性を捨てて、可能な限り似たOSとなることを宣言しました。そのため、RHELとは別のバージョンのソフトウェアが導入される可能性があります。
AlmaLinuxの環境情報、セキュリティ情報、アップデート情報について紹介します。
AlmaLinuxのリポジトリは、2021年5月12日現在、既に33ヶ国に存在しています。日本でも8件のミラーサイトが存在しています。yumコマンドでもミラーサイトを自動探査するようになっているため、場所などに応じて最速のミラーを使うことができます。
AlmaLinuxでは、yumリポジトリでソフトウェアのアップデート情報(updateinfo.xml)が提供されています。これによりyumコマンドで、パッケージ毎のセキュリティ情報を確認できたり、脆弱性のレベルによって選択的にセキュリティアップデートができます。
RHELは定期的にマイナーバージョンが上がっていきます。過去、CentOSもこのマイナーバージョンリリースに合わせてバージョンが上がっていきましたが、マイナーバージョンアップの時期にタイムラグがありました。RHEL8.4がリリースされる際、AlmaLinuxもCentOSと同様な状態が想定されていましたが、すぐにAlmaLinux8.4がリリースされました。タイムラグがあまりなく比較的はやくリリースされていることがわかります。
またAlmaLinuxでは、サイト内でアップデートに関する情報の通知が行われています。まだサイトは、情報が記載されたHTMLがWebページに配置されているだけの状態ですが、バグフィックスやセキュリティアップデートに関するまとまった情報が存在するため、セキュリティ情報の確認はCentOSよりも行いやすくなっています。
2022年5月、RHEL9のリリースに伴いAlmaLinux9.0がリリースされました。マイナーバージョンアップ同様、RHELのメジャーバージョンアップに伴うリリースも、他の代替OSより一足先に順調に行われました。
Red Hat Enterprise Linux 9の資料ダウンロードはこちら
デージーネットの調査では、AlmaLinuxが一定の安定性や安心感のあるOSであること、CentOSからの乗り換えも比較的容易に対応できることが分かっています。しかし、2023年6月のRHELのソースコードの一般公開の停止発表により、リリースの遅れや一対一のバイナリ互換が維持できない可能性があります。
デージーネットでは、LinuxOSを利用してサーバー構築をしています。LinuxOSは、安定して開発・プロジェクト活動の継続や開催が行われていくかが焦点になると考えられるため、今後の方針や動向にも注意していきます。CentOSからの乗り換え先を検討中の方や移行にかかる費用を知りたいお客様は、お問い合わせください。
なお、デージーネットでは2023年7月、今後利用したいLinuxOSについてアンケート調査を実施しました。今回の結果と、2022年7月に実施した同アンケートの結果を比較し公開しています。また、2023年にAlmaLinux9とRocky Linux9についての書籍も出版しています。
CentOSプロジェクトがCentOS8のサポートを2021年12月末で終了することをアナウンスしました。本書は、Red Hat Enterpirse Linux 8のクローンOS「AlmaLinux 8」の調査報告書です。無料でダウンロードが可能です。
Rocky Linuxは、CentOS8のサポート終了に伴って開発が開始されたOSです。本書は、Red Hat Enterpirse Linux 8のクローンOS「Rocky Linux 8」の調査報告書です。
Rocky Linuxとは、Rocky Linuxプロジェクトで開発が進められているRHELのクローンOSです。ここでは、Rocky Linuxの特徴や機能などを紹介します。
今回は、人事関連のシステム開発及びアウトソーシングを行う会社様にて、CentOS7からAlmaLinuxへの移行をした事例です。お客様は、2024年6月末にサポート終了するCentOS7を利用しており、代替のOSへの移行を検討していました。
ケーブルテレビ会社様にてCentOS8からAlmaLinuxへの移行をした事例です。お客様は、CentOS8のサポート終了に伴い新たなOSへの移行を検討されていました。移行による現行サービスの停止をなるべく最小限に抑えたいとのご要望でした。
各種Linuxディストリビューションの特徴や機能を比較し、システムの用途やコストメリットなどの視点から、今後どのOSを選択するべきか解説します。